右余極説
右翼ではなく余り極端でもなく説明したい(笑)
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レジーム・チェンジ!
今日は中野剛志氏の新刊のご紹介です。「レジーム・チェンジ」と言うタイトルの本であります。

レジーム・チェンジ―恐慌を突破する逆転の発想 (NHK出版新書 373)レジーム・チェンジ―恐慌を突破する逆転の発想 (NHK出版新書 373)
(2012/03/08)
中野 剛志

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この本で書かれているレジームとは、政治や経済の体制・政策の主流と言うような意味かと思います。特に日本の場合は90年代からさかんに言われるようになった構造改革路線を中心とした政策をデフレ・レジームと呼んで、そこから180度逆向きに転換する必要性を説かれています。

要するに、日本はバブル崩壊以後、デフレなのにずっとデフレを促進するような政策ばかりやってきたと言うことです。そこらへんのことは、皆さんにはすでに説明不要かとは思います。

中野氏の本では「TPP亡国論」「国力とは何か」「グローバル恐慌の真相(共著)」「日本思想史新論」といずれも読ませていただき(新論だけまだ途中ですが)、素晴らしいものばかりでしたが、今回のは特に良かったです。

何が良かったかと言うと、デフレについての疑問がかなり解けたからです。

三橋貴明氏も日頃からブログで近い主張をされており、著書も2冊くらい読んだことありますが、それでもまだわからない部分がありました。

インフレターゲット論者である岩田規久男氏の本を読んですっきりしない部分があったのですが、その答えがきっちり書かれていました。

デフレと超円高 (講談社現代新書)デフレと超円高 (講談社現代新書)
(2011/02/18)
岩田 規久男

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そういう点で私なりにかなり得るところが多かったです。

全体の詳しい内容は買って読んでいただくことにして、私の疑問が解かれたと言うのはどういう部分かについてだけ書かせていただきます。

岩田氏が著書で書かいている「構造デフレ説が間違いであることの理由」がいまいち納得できなかった点です。岩田氏の説明では、構造デフレ説を十分に否定できていない気がしていました。

構造デフレ説と言うのは、日本の社会や政治経済の何らかの構造がデフレの原因であるとする説で、たとえば「生産年齢減少デフレ説」や「中国安値輸入デフレ説」などがあります。

構造デフレ説への一般的な反論として、これは三橋氏も言っていることですし、私も以前に書きましたが、「デフレは貨幣的現象なので、社会の構造等がデフレの原因なら、通貨をどんどん発行してもインフレにならないことになる」と言うものがありますが、この説明がはたして正しいのか、よく考えるとわからなくなってしまいました。

その答えがようやくわかったと言うことです。やはりこの説明は不十分です。

その前に、上で挙げた二つの「構造デフレ説」については別のきちんとした検証をしておきましょう。興味の無い方は以下の紺色の文字部分を飛ばして下さい。


例えば「生産年齢減少デフレ説」とは、要するに少子高齢化で人口減少だからデフレになると言うやつですが、これについては、「生産する若年層が減り、消費しかしない高齢者が増えることになり、需要が供給に追いつかなくなるので、むしろインフレになるはず」と言う説明がわかりやすいです。これならわかります。

ちなみに、これにたいして、日本の高齢者はあまりものを買わずお金を使わないから、この反論はなりたたないと言っていた人がいましたが、それは違うようです。

「デフレの正体」と言う本(少子高齢化だからデフレになると言う本)のAMAZONのレビューにこんなことが書かれています。

原田泰『日本はなぜ貧しい人が多いのか』新潮選書の139ページ、図6を見ると1970年に最も消費水準の低かった65歳以上の人々が、どんどん他の年齢階層を抜いて2008年には一番消費水準の高い年齢階層になっているのがわかります。つまり、現在の日本では人々は退職しても消費を低下させないということです

と言うことらしいので、やはり現在では、日本の若者はお金をあまり使わない(使えない)のに対して、団塊の世代以後の人たちと言うのは、かなり旺盛に消費し続けていると言うことなので、やはり少子高齢化はデフレの原因にはならないどころか、インフレ圧力になると言うほうが正しいでしょう。

ここまでは、中野氏の本を読まなくてもわかりました。

あと、「中国安値輸入デフレ説」、つまり、海外から安い輸入品が入ってくることがデフレをひきおこすと言うことについて、岩田氏の本では「安い輸入品を買うと、消費者はあまったお金で他のものを買うから需要全体は減らない=デフレにはならない」と書かれていますが、これは大いに疑問です。

そうではないことが、中野氏の本にも書かれています。要するに、他のものを買わずに貯蓄にまわるので、やはりデフレ圧力にはなり得ると言うことです。




要するに、構造デフレ説への反論は、何らかの構造が「デフレの原因ではない」ことを説明はできていても、その構造が「デフレ圧力にならない」ことまでは説明できていない、と言うことです。

つまり、「デフレを引き起こすきっかけとなる要因」が「デフレの原因」であり、これはバブル崩壊など。

また、「単独ではデフレを引き起こさないものの、潜在的にはデフレへと向かわせうる要因」や「デフレ下ではさらにデフレを悪化させる要因」などが「デフレ圧力」であり、何らかの構造・たとえば「安い輸入品が入ってくること」などがこれにあたる。

・・・と言うことなのかなと思います。これは中野氏の本に書いてあることではなく、私がそう整理してみたと言うだけの話ですが。

なので、構造デフレ説を否定するために、その構造がデフレの原因にならないと言ったところで不十分だと思うわけです。

デフレを引き起こす原因ではないとしても、デフレ下でさらにデフレを悪化させる「デフレ圧力」になるかどうかは、また別問題なのではないかと言うことです。

そこで話をもどしますと、構造デフレ説を「通貨をどんどん発行してもインフレにはならないことになるから間違い」と言っても、構造デフレ説を否定できたことにはならない点について書きたいと思います。

デフレと言うのは、物価が下がることで、これは相対的にお金の価値があがることと同じ意味です。

と言うことは、デフレ脱却のためには、お金の価値を下げれば良く、そのためには通貨の供給量を増やせば良いと言うことになります。

そうすれば、確かに物価は上がるかもしれません。でも、それってあくまで相対的に上がるだけで、根本的な解決にならないのではないか、と言うのが私の疑問でした。

と言うのは、物価が下がる理由が、「供給過剰・需要不足」だからです。

岩田氏は、物価が上がるという期待がはじまるだけで、みんなが投資や消費をはじめるようになると言われていますが、ちょっと疑問です。この疑問は中野氏の本でもっとちゃんと答えが書かれています。

私の疑問も、お金の量をいくら増やしても、それだけで需要が増えるとは思えないと言う点でした。

私は、もしかしたら岩田氏の言うように、金融経済の需要は増えるかもしれないとは思いましたが、実体経済において需要は果たして増えるかどうかは、ずっと疑問でした。

金融経済と実体経済はいちおうつながっていますから、少しタイムラグがあってから実体経済も上向くのかなとも思いますが・・・

現在の日本は、いや、世界経済は、金融経済の好調が実体経済になかなか反映しない構造になっているような気がします。

ヘタしたら金融でバブルがおこるだけではないのか?

と思っていたら、中野氏の本にも、まさにそう書いてありました。

これがインフレターゲット論の盲点であると言うことです。

通貨の量を増やすだけでは、そのマネーが変なところに流れてバブルになったりする可能性がある。

小泉時代には金融緩和やってマネーの量を増やした結果、ホリエモンや村上ファンドみたいのがわきました。

ヒルズ族のような奴らが出てきたものの、労働賃金や労働分配率は下がり続けたわけです。格差は拡大しました。

だから、金融緩和だけやっても根本的な解決にはならないと言うことです。

中野氏はさらに、ジャブジャブになったお金が原油や食料などの商品市場になだれこんで、エネルギーや食料価格が高騰したりすればと、こうしたものを輸入している日本にとっては大幅なコストアップになり、これもデフレ圧力になると言っています。

コストアップがコストプッシュ型のインフレを引き起こすが、それがデフレ圧力になると言う説明も前半部分で書かれており、このことも私がずっと疑問に思っていたことなので、とてもすっきりよくわかりました。

デフレ下で貨幣の量を増やすことは必要としても、そのお金が変なところに流れないようにする、つまり、国内の実体経済を上向かせる方向にお金を流さないといけない、そのためには、政府が必要かつ重要な公共事業をやるべきである、と言うことです。

三橋氏も、日銀はもっと通貨を発行しろと言っていますが、同時にそのお金で公共事業をやれとも言っています。金融緩和だけでなく財政出動もやり、両方のアクセルをふかす必要があると言っていましたが、インフレターゲット論が不完全である点がようやくはっきり理解できました。

と言うことで、最近読んだ経済関係の本では、一番参考になった本でした。

↓ この本を読んでみようかと思われましたらクリックお願いします(笑)。

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コメント
この記事へのコメント
デフレ期にイノベーションは無理と思う。
大変参考になるエントリーでした。

中野剛志さん、賢さだけでなく説得力及びカリスマ性があります。このような方が(少なくとも今の段階までは)我々の側にいることは、有り難いと思います。

>ジャブジャブになったお金が原油や食料などの商品市場になだれこんで、…これもデフレ圧力になると言っています。

スタグフレーションですね。
私も石原新党の100兆円規模の通貨発行の公約を見たとき、それだけの経済政策では、スタグフレーションを引き起こすと懸念しておりました。他の公約でも、小さな政府や参議院廃止やらと、正直警戒しております。

また釈迦に説法かもしれませんが、
よく新自由主義の連中は、「生産性を向上し、イノベーションを起こせば、むしろ打って出ることで利益になる」とよく言いますが、そもそも生産性の向上とは、既存の技術をもとに無駄をなくすことでしかありませんので、その延長線上にイノベーションはまずない。

寧ろ無駄なことをすることで、新たな発見がある訳です。で、その無駄が許される経済状況はインフレ(好況)期です。

その状況であれば、野心的な商品も買ってくれる客も相当数はおり、勝った客からの意見を通じてのフィードバックがもらえ、発展の余地があります。

不景気ではそれすらも無理なのです。

私が経験した好景気時は、いわゆるバブル期で、ただ中坊高坊でしたので目に見えた恩恵は受けておりませんが、あくまで一例ですが、ファミコンなどのテレビゲームが出始めたのがその頃で、今に思えば一種のイノベーションだったかもしれません。

私の親の世代でも、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、と三種の神器が出てきており、これもイノベーションと言えるものです。

それと引き換え今の状況は、イノベーションと言えるようなものが出ていないどころではなく、富士フィルムやサントリーなどの大手が、美容や健康食品などの、その欠片もない劣化したものを売りさばいている状況です。強いて言えばGPSですか?ただそれはアメリカのものですが…。

このことから、「イノベーションとは好景気のときにこそ起こせるもの」と思いました。

以上、エントリーを読んで思いついたことを書かせて頂きました。
Sura | URL | 2012/03/17 (土) 00:57:28 [編集]
Sureさん、毎度です。

おっしゃる通り、イノベーションのためには投資が必要なわけですが、将来の見通しが暗い、需要の伸びが予想できない状況で、イノベーションのために投資などするはずが無いんですよね。

できるとしたら、政府だけですが、その政府とて、どういう分野にイノベーションをおこすと良いかなどは予測できないはずです。

インフレになり、将来の需要の伸びが期待できるようになれば、民間が研究・開発にも力を入れるようになって、それではじめてイノベーションが可能になるのだと思います。
管理人 | URL | 2012/03/17 (土) 08:46:45 [編集]
中野さん、私も好きです
日村さん

日々参考になるエントリ有り難うございます。
当方、毎度ながらの年度末ピークで、今年は人手が減った関係で特に余裕がなく、死にかけてます(笑)。

中野先生、当方がインフラ整備の面から考えていた内容とほぼ整合する内容を、経済・産業政策の面から明示しておられ、非常に素晴らしい論客だと思います。
経済産業省の人なのに、これほどの正論をここまで明確に表出するとは、いったい何者でしょうか?

ちなみに、同じ研究室である藤井先生のもともとの(本来の?)ご専門が、都市交通計画であることはご存知かと思いますが、前の大学におられた3・4年ほど前、仕事でご一緒する機会がありました。
その時は、「都市交通問題の専門家」としての藤井先生とのお付き合いでしたので、現在のような国土政策全般にわたるご活躍をイメージできませんでしたが・・・。

同分野で批判的意見を耳にすることもありますが、藤井先生・中野先生のお二人は、現在の我が国の国土政策上、国家戦略上、必要不可欠なキーマンとなっていると思います。
お二人の論説・書籍が広く国民に行き渡ると良いですね。
海驢 | URL | 2012/03/19 (月) 04:41:30 [編集]
海驢さん、こんにちは

なんと、藤井先生と面識がおありとは、おどろきです。

おふたりとも、経済学の専門家ではないのが良いところだと思います。

デフレ脱却に関しては、リフレ派の人たちがいろいろ言っていて、それもその通りと思うのですが、何か足りない気がするんですよね。

経済学者方面の人と言うのは、どこか「政府は余計なことをしないほうが良い」と言う考え方が根底にあるような気がします。

しかし、政策と言うのは、経済がすべてではありませんし、マクロ経済的に効果が同程度ならば、より国民全体にとって、もしくは国力そのものにとってプラスになる政策を選択する必要があると思うのですが、そこらへんは経済学者には無理と思います。

そういう点で、経済学者ではない、経済ナショナリズムが専門と言う中野氏にはとても期待できると思います。
管理人 | URL | 2012/03/19 (月) 08:21:19 [編集]
このエントリを読んでAmazonでポチリ。先程1回目読了しました。

三橋氏はちょっと端折って書くところがありますが、中野氏は大学の先生らしく理路整然と書いてますね。しかも今回は「です・ます」調の平易な文章で読みやすい。私もデフレの見方が整然としてきた感があります。

金融緩和の効果に関しては、リーマンショック後のアメリカ金融界の動きが格好の例でしょうね。あの時FRBは緊急危機に対処すべく、緊急避難的に金融緩和をしましたが、多くの地方銀行はその恩恵を被ることができず、バタバタと破綻したと聞きます。

その一方で、リーマンショックの原因を作ったともいえるニューヨークの金融業界は、翌年には業績を急回復させたと記憶しています。恐らく彼らは金融緩和で得た資金を原油や穀物市場に突っ込んだのではないでしょうかね。

つまり、金融危機で救うべき地方銀行のための資金がニューヨークの金融業界に回り、儲からない地元企業より儲かるグローバル市場に投入されたというのが事の顛末と見ています。

金融緩和はデフレ脱却の必要条件ではあるのですが、それ「だけ」では十分ではなく、緩和された資金の使い道が本来使われるべきところに充当されないと意味がなく、それを決めるのは「市場」ではなく「政治」ということなのでしょう。
かせっち | URL | 2012/03/24 (土) 19:21:43 [編集]
かせっちさん、こんにちは!

良い本ですよね、これは。

三橋氏はまだ良いほうですが、純粋なリフレ派の人の言うことは金融経済しか考えていないようで、金融政策に偏りすぎでいまいちに思えます。

リフレ派の人は、政府や官僚をまったく信じておらず、政府はどこかへ投資するか決めたりなど余計なことをしないほうが良いと言います。そこのところが新自由主義者とちょっと似ている気がします。

産業政策をガンガンやれとは言いませんが、金の流れ先くらいは政府がちゃんとやらねばと思いますね。

その点、中野氏の言っていることが一番バランスとれているように私には思えます。
管理人 | URL | 2012/03/26 (月) 08:24:27 [編集]
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