右余極説
右翼ではなく余り極端でもなく説明したい(笑)
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お粗末なTPP推進論(2)
昨日書きました、勝間和代氏のTPP推進論についてです。

後半部分には、多少マシなことも書いてありますが、あいかわらず基本認識から間違っている部分もあります。

勝間氏のこの推進論のタイトルは「2条件クリアしTPP参加を」となっていて、TPP参加にあたっては、まず2つの条件がクリアされることが前提で、その上で参加と言っているところが、とにかくやみくもに参加だと言っている人たちより多少マシとも思えます。

そして、その「2条件」のうちの1つは、まあ良さそうなことを言っておられるようにも思います。が、もう1つはダメダメです・・・

では、昨日の続きを見て行きましょう。

勝間和代のクロストーク~みんなの経済会議~

2条件クリアしTPP参加を
2011年2月16日

(前半部分は昨日のブログ参照)

 日本は現在、コメをはじめとしたさまざまな農産物に高い輸入関税を課し、国内農業の生産・雇用を保護しています。しかし、その影響で国内の農産物価格が割高になり、消費者が広く負担していることも忘れてはなりません。日本のTPP参加の影響をめぐっては、政府内で推進派の経済産業省・内閣府と、慎重派の農水省で見方が分かれ、バラバラな試算が示されています。経産省は「参加しなければ、日本の国内総生産(GDP)が年間10・5兆円程度縮小する可能性がある」と言い、内閣府は「参加すれば、GDPを年間2・4兆~3・2兆円増やす」としています。対照的に農水省は関税撤廃による国内農家の廃業などで「損失が11・6兆円にのぼる」と分析。「雇用も340万人減る」と言いますが、貿易拡大に伴う新規雇用は考慮されていません。TPP参加の影響に関する統一的な試算を示してほしいと思います。

 また、TPP参加に当たり、次の二つが前提になると考えます。ひとつは適切な通貨政策です。TPPがクローズアップされた背景には、各国が輸出拡大を狙い、自国通貨を安く誘導する「通貨安戦争」があることも見逃せません。成長率が低迷する先進国を中心に各国はさまざまな方法で海外の成長を取り込もうとしています。日本がデフレ継続を許し、購買力平価で見て過度な円高を放置したまま貿易自由化を進めれば、大きなハンディを背負います。国はTPP参加と同時に有効なデフレ対策や他国との関係で不利にならない通貨政策を講じるべきです。

 もうひとつは、保護対象となってきた国内産業を規制緩和などを通じて抜本的に強化することです。農家への戸別補償拡大だけでなく、日本の農業が海外勢と戦えるように体質を強化することが肝心です。例えば、企業が農業に新規参入しようとしても、土地の利用規制などがハードルとなり、円滑に進みません。TPP参加に向けて、政治家や官僚には大胆な規制緩和などを含めて海外と公正に競争できる環境作りを進めてほしいと思います。ご意見をお待ちしています。(経済評論家)

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引用した文章の冒頭部分から順番に見て行きましょう。以下では、「この色の文章」は上記からの引用です。

日本は現在、コメをはじめとしたさまざまな農産物に高い輸入関税を課し、国内農業の生産・雇用を保護しています。しかし、その影響で国内の農産物価格が割高になり、消費者が広く負担していることも忘れてはなりません。

あいかわらず、「国内の農産物価格が割高になり、消費者が広く負担している」と言う論法の好きな方が多いようです。輸入自由化を推進するにあたっては、このような言い方が世論にアピールするために一番有効な手法でしょう。

確かに価格は割高になっている農産品もあるでしょうが、これだけでは、まるで関税で保護することの目的が、ただ農家の雇用を守るだけ、みたいに受け取られてしまうでしょう。

こうやって、農家と一般消費者を対立関係とみなし、少数の悪者を叩くと言う構図を作り出して、自分の言説に多数派の支持を集めると言う、最近流行の(昔から?)卑劣な論法だと思います。

しかし、農産物に関税をかけて国産品を守ることが消費者に何のメリットも無いのか、ちょっと考えてみる冷静さが必要でしょう。

自国の農業の保護は、食品の安全性の確保や安定供給、自国の豊かな食文化の保護など、これは消費者にとってもメリットになることではないでしょうか。

その他には、食糧を自給することは安全保障と言う側面もあります。食料をあまりに他国に依存しすぎることで国益を損ねる可能性もあります。どこの国だって自国民を食わせるのが優先で、今は余っているぶんを日本に輸出しているにすぎません。食料安全保障の確保と言う考え方も、広い意味で言えば国民(消費者)の利益にかなうことです。

いい加減、「農家を守るために消費者に高い金を払わせている」みたいな粗雑な議論はやめにすべきです。そうやって感情的にさまざまな業種の人たち(商店街、土建屋。公務員、そして今度は農家)を、たかが非効率とか小さな利権や既得権がどうとか言って叩いてその業種ごと壊滅させるところまでやってしまって、社会全体に何か良いことがあるのでしょうか?

彼らが失業して労働者市場になだれこんで来れば、みんな困るのです。それがデフレの一因でもあるでしょう。構造改革のイデオロギーはいろんなものを叩いてぶっ壊して、その結果として失業者があふれ、賃金も価格も下落してデフレを悪化させてきたと私は思います。

それもこれも、世論がアンチの思考で感情的になってしまったためです。アンチの思考は暴走します。いい加減、アンチの思考から抜け出す時です。

話を戻して、引用した文章の前半部分について考えてみましょう。

日本は現在、コメをはじめとしたさまざまな農産物に高い輸入関税を課し、国内農業の生産・雇用を保護しています。

保護するのには正当な理由があることは上で書きましたが、「日本は現在、コメをはじめとしたさまざまな農産物に高い輸入関税を課し」と言う部分についてはどうか。

その通り、一部の農産物にはかなり高い関税を課しているのは事実です。

関税率の高い農産物だけ上から順番に並べてこんな乱暴なことを言う人もいます。(こちらより引用)

110405unfair.jpg
(画像クリックで拡大)

しかし、関税率の高いものだけ並べるのはアンフェアーでしょう。

まず、日本の関税率って国際的に見て高いのかどうか、農産物以外のすべてのものを含めて見るところからはじめましょう。

菅首相はTPP参加にあたって、「平成の開国」と言うスローガンをぶちあげました。私には、よく指摘されるように、「平成の売国」、もしくは「平成の壊国」のほうが正しいと思いますが・・・

いずれにせよ、普通の人は、開国などと言われると、「え!?日本は鎖国していたの!?」と思うでしょう。

しかし、そんなはずはありません。自由貿易うんぬんを言うなら、日本の平均関税率が他の国々と比較してどうなのか見てからものを言うべきです。

で、こちら(よくまとまっているサイトです)から引用させていただいたデータが以下です。

比較の対象をどこの国々にするかと言う点ですが、まずは世界の貿易量の80%以上を占め、GDPで見ると世界の90%を占めるといわれるG20参加国の中での日本の関税率がどのくらいかを見てみましょう。

110405kanzeiritu.jpg
(画像クリックで拡大)

左側が全品目の平均関税率、右側が農産物の関税率です。

だいたい、韓国が自由貿易を頑張っているとか言う人は、このグラフの韓国の結果をどう見ているのでしょうか。韓国は全品目の平均関税率も日本よりずいぶん高いですし、農産物の関税率など飛び抜けて高いのに、日本は開国が必要だと言っておきながら、韓国は鎖国しているとか言わないのが不思議なバランス感覚です。

韓国はさておき、日本を見ると、まず日本の平均関税率は全然高くない、むしろ低いほうです。日本はじゅうぶんに自由貿易をやっていると堂々と言えるくらい関税は低いほうです。

では、農産物についてはどうか。確かにやや高いほうです。しかし、以下で説明しますが、それは一部に高い関税のかかった農産物があり、それが全体を引き上げているからです。

それは上のアンフェアーなサイトからの引用を見てわかる通り、米などの一部の農産物に特別高い関税をかけているからなのであって、実は、日本の農産物には関税がゼロのものもかなり多いのです。

面白いデータを引用してみます。

以下のグラフでは、それぞれの農産物にどれくらい関税がかかっているか、その分布を比較したものです。青い部分は関税がゼロの品目を示しています。赤い色が濃いほど関税が高い品目になっています。

110405hikazei.jpg
(画像クリックで拡大)

で、日本のところを見ると、青い部分の多さは上から4番目、つまり、それだけ日本は関税がゼロの農産物がかなり多いのだと言うことです。

上のアンフェアーと書いたサイトでは、関税が高いものだけを上から並べてましたが、全体で見ると、日本の農産物には関税がゼロのものがとても多い、日本はG20の国々の中で4番目に関税がゼロの農産物が多いと言えます。

たしかに、日本は米など一部の農産品の関税は高いかなりですが、そういう高関税の農産物があるのはどこの国も同じです。アメリカだってそれなりに高い関税をかけているものはあります。

またグラフを見ての通り、日本は農産物の関税がやや高いほうだが、飛び抜けて高いわけでない無いのです。

それから大事なことを忘れてはいけないのですが、それは、「日本の食糧自給率の低さ」です。

日本の食料自給率はカロリーベースで4割程度と言われていて、実はこのカロリーベースと言うのはかなりインチキ臭い指標なので、それで何かを言おうとするのはここではやめておきますが、少なくとも、米を除く穀物類、小麦や大豆や飼料用のトウモロコシなどのほとんどを輸入に頼っているのは事実です。

この穀物の自給率の低さはかなり致命的なものです。そして、自給率が低い=大量に輸入している=市場は開かれていると言うことです。

以上、日本の場合についてまとめるとこうなります。

・平均関税率はかなり低い。

・農産物の平均関税率も飛び抜けて高い訳ではない。

・関税ゼロの農産物がかなり多い。

・コメ以外の穀物自給率の低さを考えると、すでに市場はかなり開かれているし、
 これ以上食料を輸入に依存するのはむしろ危険。


→日本はすでにかなり国を開いている。

これ以上に開きたがるのは、ただ裸踊りしたいだけの露出狂では!?

と言うことで、輸入に関してはこのくらいにして、次に行きましょう。

 また、TPP参加に当たり、次の二つが前提になると考えます。ひとつは適切な通貨政策です。TPPがクローズアップされた背景には、各国が輸出拡大を狙い、自国通貨を安く誘導する「通貨安戦争」があることも見逃せません。成長率が低迷する先進国を中心に各国はさまざまな方法で海外の成長を取り込もうとしています。日本がデフレ継続を許し、購買力平価で見て過度な円高を放置したまま貿易自由化を進めれば、大きなハンディを背負います。国はTPP参加と同時に有効なデフレ対策や他国との関係で不利にならない通貨政策を講じるべきです。

この部分だけ見れば、珍しくかなりまともなことを言っています。しかし、この後の文章ではまるっきりダメなことを書いています。

保護対象となってきた国内産業を規制緩和などを通じて抜本的に強化する」だの、「政治家や官僚には大胆な規制緩和などを含めて海外と公正に競争できる環境作りを進めてほしい」だの書いていますが、デフレ対策をしろと言うなら、そもそもTPP参加はNGなはずですし、規制緩和ももっての他です。

規制緩和による自由化で競争させるのは、デフレの時にやってもデフレを促進したり、業界そのものが破滅的な影響を受けるだけです。タクシー業界や運輸業界の規制緩和を思い出せばわかることでしょう。

デフレの状況下で、いくら自由化して競争させて経営努力を促しても、需要そのものが少ないのですから、お互いにつぶし合いをやるか、労働者の賃金カットしまくるか、過剰なコストダウンで安全性を犠牲にするか、と言う悲惨な結果は目に見えています。


TPPに参加すれば、安い農産物が入ってきて、国内の農業は壊滅的な打撃を受け、失業率が増加して労働賃金も低下、不況に拍車がかかり、デフレも余計に悪化するだけでしょう。

何度も書きましたが、日本が長年のデフレから脱出できないのは、構造改革の信者たちが自分たちのイデオロギーばかりにとらわれて、デフレの状況なのにインフレ対策ばかりやってしまいたがるせいです。

その洗脳があまりに行き渡りすぎて、何かと言えば規制緩和と自由化、ついでに特定の業種を叩いて潰すと言うバカの1つ覚えの繰り返しが、デフレを悪化させているのです。

TPPみたいなものに簡単に乗っかろうとするのは、「自由は素晴らし」とか「社会主義はダメ」とかその程度の思考、もちろん、そのこと自体は間違っている訳ではありませんが、そういうイデオロギーにオツムがべったり染まってしまっているから、現在の状況に正しく対処するにはどうしたら良いかと言うことが冷静に考えられなくなっているせいだろうと思います。

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今月の中旬からちょっと忙しくなるので、毎日更新が続けられるか自身ありませんが(時々休んだらすみません)、頑張りたいと思います。


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中野 剛志

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